吉本 有輝子 舞台照明家
最初はそれこそ、見よう見まねでした。
学生劇団で舞台照明を始め、最初の数年間はとにかく知らない事ばかりでした。舞台照明とは何かを知りたい身に付けたい一心で、技術と知識を身に付けることに夢中になりました。
大学を卒業して2年後、はじめて直接は知らない東京の演出家と仕事をすることになりました。青年団の平田オリザさんを京都に迎えてのプロデュース公演『月の岬』。稽古での舞台の仕上がりは、素晴らしいものに思えました。照明デザインについて正式に習ったこともなく。我流の考え方と方法で試行錯誤を重ねて来た私は、自分なりの確信はありながらもこれでいいのだろうかと思いながら公演を迎えました。
その東京公演で思いがけなく、青年団の劇団の照明家の方をはじめ数人の年輩の照明家の方から照明デザインについての感想と意見を頂きました。それまで独りで考えてきた、演劇における照明デザインについての方法、何が大事だと思うかということについても話し合うことができました。そして、実際の舞台の評価を聞くことによって、私が我流で考えてきたこと、照明デザインをしたことはプロとして通用するかもしれないとはじめて思いました。
自信を得たと同時に、正解がない照明デザインの難しさを、その時から切実に感じはじめました。職業として舞台照明を続けていますが、今でも毎回思い悩んでいます。舞台照明とは何かという定義を作品ごとに考え直し続け、具体的に試行錯誤を重ね自分で発見していくこと。その作業に、最初見よう見まねではじめたころと同じように、今も夢中になっています。
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