竹ち代 毬也 ダンサー
絵を描くのが好きだったがたいして上手いわけでもなく、それで生活できるわけでもないので何となく知人の紹介で高校卒業後デザイン事務所に就職した。決められたアイディアを元に決められた色で図案にする何となくの8年が過ぎたある日、事務所にいたデザイナーがニューヨークに居たこともあり遊びに行った。たった一人英語もできず初めての海外だが毎日から逃げるかのように行った。ボクにとっては大きい出来事がそこには日常の中にあった。街を歩いててもすれ違う誰とも目が合わず不思議だった。無関心というよりみんなは自分の目的に向かって歩いてるように見えた。紹介された仕事を日々繰り返してるボクに比べ、みんなは前進してるように見えた。それにレコード店でレジに人が並んでても、店員と先頭の客とが音楽の話をしてるが誰も何もいわない。これも無関心というよりそうしたいのだから待ってればいいみたいな、人の主張も尊重できる考えの大きさに、自己主張のないボクが小さく見えた。そんな姿勢や生きかたが滞在中に積もっていく。
帰国してからが大変だった。今まで居た職場や生活が、変わってしまった自分にとって色彩がなく感じた。今のままじゃ駄目だというあせりからなぜかスキンヘッドにした。小さな主張。二十代も半ばをすぎこのまま結婚してこのまま子供ができ、このままこの小さい事務所で働くことにまっ暗を感じた。
仕事を辞め、後は絵を描くことしかなかった。描きたいものがあると言うより描くことで自分を確かめるしかなかった。確かな自分がつかめるならなんでもよかった。からだひとつで自分を表現できるもの、今は舞台で踊りをやっている。だいぶ肩の力も抜けた。
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