谷田 有似 切り絵芸術家
「切ってつながる」
表現する人にはなりたいと思っていた。
でも切り絵をする人になろうとは考えていなかった。
絵は小さい頃から好きで、暇さえあれば描いていた。
大学では中国文学を専攻、中国文化や中国語なども好きで、何度か短期留学もした。
そしてやはり長期で留学しようと思っていた。
でも、中国で切り絵をならうことは、行く数ヶ月前に決めたこと。
それまでは、何か芸術的なことをならえたらいいな、と漠然としか考えていなかった。
なぜ切り絵になったのかというと、「切り絵してみたら」と周りの人から言われたから。
でも、私の切り絵の印象は単色、白黒。
いろんな色が好きな私は、切り絵には少し抵抗があった。
でも、そう言われてみると、じゃあやってみようかな、という気持ちが生まれたのだ。
中国に行くことだし、中国で切り絵をならおう、と。
北京で剪紙(ジエン ジー:中国の切り絵)の先生に出会い(出会うまでには長い道のりがあったのだけれど)、
初めて「ハサミで薄い紙を切る」切り絵を知った。
中国の学生に混じって剪紙の基本を学び、帰って課題を作る日々。
最初はハサミに慣れなくて、やっていけるかと正直不安だった。
でも日が経つにつれ楽しくなってきた。
イメージを形にすることが、形になっていくことがとても嬉しくなった。
それでも、「なぜ切り絵なんだろう。」その時も、そして今でも。
帰国して今では、切り絵教室をしたり、
個展やイベントで切り絵を展示して、見てもらう機会をつくったり。
それでも切り絵の「先生」と呼ばれたり、作品についての質問や「なぜ切り絵なのか」、
「なぜハサミなのか」という質問にはうまく答えられないでいる。
歩いてきた道で拾ったカケラを合わせていく。
それが切り絵の形になっていったのではないかと思う。
色々な思いや人とのつながり、経験などを自分で合わせて、進んでいく。
そしてそれが徐々に形になっていく。
気になった言葉、物、人、そしてそれをつなげてつながって。
その思いが形になっていく。これからも。
それが私の切り絵なんだと思う、きっと。