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渕上 純子

京都市東山青少年活動センター

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掲載日:2011年9月18日

渕上 純子 ミュージシャン(ふちがみとふなと)
私の分岐点といえば、プロミュージシャンになりたくて仕方なかった自分と、そういうのがどうでもよくなった自分、の分かれ目かなあ、と思う。なりたくて仕方ない時にはどうあがいてもなれなくて、その時は音楽を職業にするということは、誰かに認められてCDを出したり、テレビに出る人になる事だと思っていた。もちろん音楽が好きで作りたいものがあっての事だけど、そういう音楽家になる道のひとつに見えたコンテストなどを受けるうち、何が楽しかったのか、わからなくなってしまった。 
 それで音楽をすっかりやめて、別の職業(私の場合は学校の先生)についたり、それも違う気がして旅行者になったりしてみたのだけれど、結局、心の奥の「音楽がやりたい」という気持ちが消えなくて、誰にも見せず、誰にも聴かせず、ひとりで音楽をつくるようになった。ひとりで好きな音を出す。好きなことをする。人が見たら変だろうなあ、と思うような事だって、誰も見ていないので平気だ。こんな風に歌いたいなあ、こんな風にできたらなあ、と試行錯誤しているうちに、なんだか技術が上達した。一人のはずが、同じような事を考えたりやったりしている人にゆっくり出会って、少しずつ仲間も増えた。そうしているうち、知らない間に自分の音楽にお金をくれる人がいた。今は肩書きはどうでもよくて、明日の音の事を考えている。このまま時間が止められたらいいのに、と思うほど幸せな音がまた出せますように。お客さんから頂くお金の重さは、昔よりずうっと、わかっていると思う。


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