「陶芸を通して」
凡 陶芸倶楽部 【野嶋 信夫 さん】
![]() |
![]() |
大宮今出川を少し北に行くと、住宅街の中に表に様々 な陶器が並ぶ一軒の町屋があります。玄関を入りすぐ左はギャラリースペースとなっており、家の奥には天井の高い作業場があります。大正以前からある建物で 元々は機織り職人の作業場所だったというこの部屋には、壁際の棚に作品がずらりと並んでいます。今回は、こちらで陶芸教室をされている野嶋信夫さんにお話 を伺いました。
野嶋さんが陶芸を始めたのは24歳のころで、西陣に来られたのは7、8年前のことだそうです。「大した動機がなくても、やってみることだ」と野嶋さんはおっしゃいます。高校の頃はテニス(インターハイに出場されたこともあるそうです)をされていた野嶋さんが、次に出会ったのが陶芸でした。
|
陶芸品やガラスの登場により、人々の暮らしは衛生面、部屋の明るさの2点において劇的に変わったといいます。また、紙コップやそのままお皿と して使えるトレーなど、使い捨てで最初が一番良い状態のものに対し、陶器や漆器などは長く使え、使い込むと味が出てきて、愛着や壊れたときは悲しさなどの 情緒もわいてきます。そういった陶器の良さ、手作りのものの良さを教えたいと思い、陶芸教室を始められました。
![]() |
西 陣では、若いお弟子さんと仕事場を共有されていて、作った作品はレストランへ提供したり北白川にお店をかまえてそこで販売したりしているそうです。西陣地 域で好きな場所を尋ねると、同志社大学の北側にある相国寺、寺之内通のお茶関係の道具屋さんや和菓子屋さんを挙げてくださいました。また、こちらの町屋は たまたま家を探していたら空いていて越してきたそうで、それと関連して「タイミングというのは思いを持っていて、自ら情報発信をしていれば落ちてくるものだ。例えば、旅というのはその場所が面白いのではなくその人のテンションが面白くさせているんだよ。」というお話もしてくださり、なるほどなと思いました。
今の若い人に何かメッセージを、とお聞きしたところ、「今の若い人は 手段を目的にしすぎている。目的、つまり何がしたいかをしっかり持つことが大事で、目的を持てばその手段は自然に表れてくる。」とおっしゃっていました。 「よく若い人や学生が言うような『○○になりたい』『××語を話せるようになりたい』というのはあくまで手段。」ともおっしゃっており、自分の考え方や将 来、就職についてを改めて考えさせられました。野嶋さんの哲学のようなお話をたくさんしてくださり、それは陶芸というものづくりを長年ずっと続けてこられ たからこそ、わかることでもあるのだろうなと思いました。
(執筆者:早川 みなみ)
☆他のスタッフの感想
・「楽しくなければ人生じゃない」、「意 味のない会話でも、意味がある」など、自分の普段の生活について、すごく考えさせられることが多かったのが印象的でした。近所の人々との会話や、付き合い を大事にするということが、安全な地域になっていくことにつながるのだろうなと思いました。また、安心して暮らせることや、開放感のある町屋に住むこと が、発想力豊かな芸術家にとってとても良い環境になっているように感じました。
・野嶋さんのお話を聞いて、「とりあえず何かやってみよう」という気持ちの大切さに気づきました。私も、これからそういった気持ちを大切にしていきたいと思いました。
・趣のある物づくりの仕事場を見ることができました!器のことだけでなく、広くお話がきけて良かったです。