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⑧【珈琲 逃現郷】菅原 隆弘(すがわら たかひろ)さん

京都市北青少年活動センター

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掲載日:2012年8月14日

「店をつくる 自分の理想とお客さん」

珈琲 逃現郷  菅原 隆弘さん


烏丸今出川から西へ向かい、西陣中央小学校のすぐ近くにある「珈琲 逃現郷」の店主、菅原隆弘さんに今回はお話をうかがいました。お店に入ると店中は木造りでカウンター席とテーブル席があり、壁には書家さんの作品の展示、奥にはCDやレコードも置いてあって、とても落ち着いた雰囲気の喫茶店という印象を受けました。

お店を開く前には、喫茶店で働いていたこともあり他にも色々と仕事を経験してこられたそうですが、第1回のインタビューで紹介 した小針さんの誘致がきっかけで西陣に来て、もう十年以上は西陣に住んでおられます。元々モノをつくることに興味があったそうで、「どんな仕事でもモノを 作る、その取り組み方は色々ある」「お店は自分の作品」と菅原さんはおっしゃいます。そこで、ご自分のお店を開くことになって、住み慣れた自分の庭である この土地に「珈琲 逃現郷」をオープンされました。

「逃現郷」はオープンして1年ほどで、基本的には菅原さんがお店を切り盛りしていますが、最近見習いさんの育成も始まりました。夜の 12時まで開店していて、カレーやサンドウィッチなどを時間に関係なく提供しており、常連さんは夜に定着することが多いそうです。オープン前の40代くら いのお客さんが多いとだろうという予想に反して、実際は学生や女性の一人客も多いとのことです。

「オープンして3ヶ月はしんどかった、完成度6割くらいで。なぜかというと店を作った自分には欠点が見えるから」と菅原さんはおっしゃいました。元々菅原さんには自分の理想の喫茶店 があって、サービス、外観、内装、メニューは理想に近づくように日々修正が加えられています。嬉しいことは?と訪ねると、「建前じゃなく、『おいしい』と か『また来ます』は嬉しいよ。サービス業をする者として喜んでもらえるのは嬉しい。もう一つはお店が納得するところに近づいていく所。内装でもいいしカ レーでもいい、店に対する自分の求めるレベルがある。そういう中で、何回も来てくれるお客さんがいるのは、自分の理想とお客さんの満足が近いってことだか ら嬉しい」とおっしゃいました。また、周りとのつながりについて、同業者はライバルではなく仲間に近い感じで、お店には他店の宣伝も置いてあり、お客さん には色んな店から好きな所を選んで欲しいそうです。

店名の「逃現郷」には、現実逃避をして好きな時間を過ごして欲しいという菅原さんの想いが込められています。会話を楽しんでも本を読 んでもよい、好きな時間を過ごすということは、インタビュー中に私達も様々なお客さんの姿を見ましたが、皆さんくつろいで穏やかに過ごされていたことから も感じ取れました。

最後に、お店で話すこともあるこの地域の若者についてお伺いしました。「大学の3、4回生と話すことが多いね、そろそろ大学内部から 離れて自分の住んでいる地域に目を向け始めるからかな。仕事や就職の話とかしますよ。最近の若者の印象としては、本当に素直な子が多い。反面、打たれ弱さ はみえるかな、あきらめる理由がキレイだったりする」と言われました。情報の多い時代だから迷うことも多いだろうけど、自分の適性や才能に頼らないで好き なことをあきらめずにした方がよいと言う言葉には、土掘りから大工仕事まで本当に、自分の手でゼロからお店を作り上げてきた苦労と重みを感じました。

(執筆者:山田絵理香)



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