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②【和裁士】服部 美幸 (はっとり みゆき) さん

京都市北青少年活動センター

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掲載日:2012年8月14日

「職人とお客様と着物」

和裁士 【服部 美幸 さん】


 物静かな工房ではビートルズが流れ、出来上がった着物に囲まれながら新しい着物が1着1着丁寧に作られている。「着物」というと、とて も高価で早々手が届かないというイメージがある。しかし、着物1着1着に愛情を注ぎながら作られる着物を見ると、1度は着たくなる。しかも手に入らない値 段ではないものもあるとは驚きだ。今回は、前回の小針さんの紹介で、「アートイン西陣」に工房を構える和裁士 服部 美 幸さんに取材した。服部さんの着物作りは手縫いである。それを象徴する針山には、多くの針が刺さっていた。今、「和」や「日本伝統」というキーワードを耳 にするなかで、日本の伝統的な衣装である「着物」を仕立てられている和裁士という職業に就く若者は、少なくないという。しかし、職人ということで、弟子入 りや修行の末に和裁士として働くことは、厳しく、忍耐が必要のようだ。そんな中、彼女は、今年で8年目を迎えている。

 元々は、服飾の専門学校に通い、洋裁を中心に学んでいたという。服飾を学ぶ上で本場であるフランス・パリへ留学する。そこで、思いが けない出会いをする。あるクラスメイトに、日本の伝統的衣装である「着物」について教える機会があった。日本人として「着物」を紹介したかったが、いまい ち理解できていない自分に気づき、帰国後「着物」について学ぶことを決心した。「異文化」にふれることで、「自文化」を知るということであろう。

 2~3年の修行を経て、個人工房を持ち和裁士として働く上で大切にしていることがあるという。それは、お客様1人1人のことを考えな がら制作していくことだ。制作依頼は伝票1枚で来ることが多く、なかなかお客様と直接会うことはできない。そんな中でも、お客様に合った1着を作るために 体重・年齢・身長・性別などからイメージし、制作するという。また、風合いや奥深さを感じられる手縫いで制作することも大切である。1人で作業するにもか かわらず、反物なら3日で仕上げるというのだから驚きだ。

 着物1着にしても、仕立てる職人である和裁士だけでは、着物は作れない。例えば、様々 な種類の布を作るためにも様々な糸を紡ぐ職人、また、糸を生地にする職人など、着物1着にも多くの職人の影がある。さらに、シミ抜きや染めなども含める と、その人数は計り知れない。そんな中で、和裁士という職人たちは、多くの職人とお客様を繋げる仲人役を果たしている。職人それぞれの技術あっての着物で ある。そんな着物制作において重要な役割は、和裁士の魅力の1つであろう。四季折々に変化する生地の種類や柄の種類など、江戸時代から変わらぬ型は、流行 に囚われず、職人の技術をフルに表現できる世界に誇るべき伝統なのではないだろうか。   執筆者:井上栞(西陣ひとまちスタッフ)



☆他の取材スタッフの感想

こだわりを持って仕事を されている熱意を感じました。着物などの日本の伝統文化も少しずつ馴染みやすく工夫されたりしていて、若者も引き付ける魅力と可能性を感じました。また、 服部さんのターニングポイントでもある留学の話から、文化の違う人と関わることや、その行動力が大切なのかと思いました。職人の町を実際に訪れて、いまま で感じなかった古都・京都のありがたみを肌で感じ、これからの日本に残すべき伝統をこれからも発見していきたいです。

 ☆服部美幸さん連絡先:〒603-8223 京都市北区紫野東藤森町11-1藤森寮2階


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