「時代と共に変わりゆく西陣織の姿」
青木織物株式会社 【青木敏高 さん】
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今回、お話を伺った青木さんは織物業をされています。先代は表具(襖や屏風の柄)を手掛けていましたが、戦後からはネクタイを 作るようになり、現在はそれに加えてブライダルに使われる貸衣装なども作っています。前回のインタビュー先である浅井さんが身につけていたネクタイも青木 さんが作ったものだそうです。青木さんは、平成元年に父親が病気になってしまったことを機に、正式にこの織物業の後を継がれました。
仕事のメインである「ネクタイ」のデザインはヨーロッパの方から仕入れているものが多く,お しゃれなデザインのものがたくさんありました。そして、最近注文が多いブライダルの貸衣装では、男性用の少し派手なベストなどに使われる生地を作られてい ます。今、西陣織では洋装を手掛けられていますが、洋装と和装の大きな違いは見た目だけではなく、仕立ててきた人の名前が出るか出ないかということにもあ ります。和装では、店などで展示しているそばには作ることに関わった職人の名前はわりと大きく出すことがあります。しかし、洋装では職人の名前は出さず、 ブランド名だけを全面に出していくので、そういうところが少しさみしいことのように思っておられる様子でした。また、仕事が業者相手であり、お客と直接顔 をあわすことがないものですが、嬉しい時というのは「布でだしたものが、展示会などで形になって表れてくれているのをみた時」だそうで、そのような面では 洋装だとより一層華やかな雰囲気の展示になって良いのかもしれません。
現在、青木さんが住んでいる場所は西陣地域ではありませんが、仕事場として昔住んでいたこの場所に通われています。この地域 は、以前はたくさんの機織りの音が聞こえるような場所であり、営業マンや職人が多くいてにぎやかな場所でした。しかし、時代が進むにつれてどんどん廃業に 追い込まれる店が多くなってしまい、今ではとても静かな場所になってしまいました。「西陣年鑑」という地域のお店の名簿を見せていただきましたが、それを みると、昔は1,500店ほどあったものが2008年には300店ほどになっていました。数字でみるとこの地域の衰退が明確にわかり、少しさみしく思いました。
(執筆:細田祥子)
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☆他のスタッフの感想☆
・今回のインタビューに行ったことで、西陣織に対するイメージががらっと変わりました。最初は専ら和柄のものばかりだと思って いましたが、実際にはモダンなものづくりの場でも活躍していることを知りました。生地のサンプルをたくさん見せてもらいましたが、珍しいデザインなどがあ り、とても面白かったです。
また、西陣地区の機織り業は年々減ってきているそうですが、伝統ある貴重なお仕事だと思うので、これからもずっと残っていってほしいなと思いました。(布川)