「町家から生まれる人とのつながり」
町家倶楽部 【小針 剛 さん】
8月24日の夕方、私たち西陣ひとまちスタッフは、最初のインタビュー相手・小針剛さんにお会いするべく、鞍馬口通にあるカフェ「さら さ西陣」へ向かいました。小針さんはカメラマンとしてお仕事をされる一方で、「町家倶楽部」という民間団体を立ち上げ、京都の町家の物件を紹介する活動を されています。少し緊張した面持ちの私たちスタッフとにこやかにあいさつを交わした後で、小針さんはご自身の人生について、町家について、密度の濃いお話 をたくさん聞かせてくれました。
小針さんは、東京のご出身ですが、小さい頃は親御さんのお仕事の都合で日本中を転々とされていたそうです。田舎の方に住んでいた時は、 まだいろりが使われていた、ということもありました。ですがそんな生活だからこそ、子供も自然と家事を手伝うようになり、それがきっかけで家族の間に自然 とコミュニケーションが生まれていました。近代的なマンション暮らしでは、あまりにも多くのことが満たされすぎていて、なかなか家族の間に親密な空気が生 まれることはありません。小針さんは町家に住むことで、より家族の絆を強いものにしたいと思ったのです。
しかしその頃、町家の所有者が町家を貸そうと不動産屋に相談しても、傷んだままでは貸すことができないという現状がありました。貸すこ とができるようにするためには修理・改装のために高額な費用を費やさなくてはならなかったため、町家が活用される機会はどうしても少なくなっていたので す。そこで小針さんは友人とともに、「町家の仲人役」として「町家倶楽部」を立ち上げました。町家倶楽部は不動産業者とは違い、貸主と借主の間でしっかり とコミュニケーションがとられ、深い人間関係が築かれるのをアシストします。そうして生まれた信頼関係のもとで、貸主は借主がどんな人で、どのように町家 を使いたいのか納得したうえで、よく話し合い、責任の分担もはっきりさせた上で契約を交わすことができます。借主は、念願だった空き家に住むことができ る。貸主は空き家だった町家から家賃収入を得ることができる。また小針さんたちも活動を通して人脈を広げることができます。そして町家倶楽部の活動は地域 の活性化にもつながっていったのです。町家の歴史・文化的な価値もちゃんと認められるようになりました。関係するすべての人にとってメリットがあるだけに とどまらず、社会にも良い影響を与えている。でも小針さんたちの活動は、「地域活性化のために」などと、大きなことを考えて始まったものではありません。
ただ、小針さんをはじめ、この活動に関わってきた多くの人が、それぞれに「自分が何をしたいか」「相手が何をしたいと思っていて、その ために自分に何ができるか」という本質的なことを忘れることなくやってこられたからこそ、プラスの連鎖が生まれたのです。そしてそこには豊かな人間関係が ありました。
小針さんは予定時間を越えても面白いお話・ためになるお話を熱心にしてくださり、あっという間に時間が過ぎてしまいました。お話をうかがっていて、「人」というのは何物にも代えがたい大切な財産なのだと強く感じました。 執筆者:小嶋健之(西陣ひとまちスタッフ)
☆他の取材スタッフの感想
・小針さんからはあたたかい印象を受けました。自分から積極的に人と繋がっていくことが、自分の世界を広げることにもなるのだと思いました。
・ 今まで自分が考えていた地域貢献について新しい見方を得ることができました。また、改めて人との出会いや絆の大切さについて知ることができました。
☆町家倶楽部ホームページ http://www.machiya.or.jp