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30. 【西陣織元】 山口  豊さん

更新日:2014年11月29日(土)

西陣ひと・まち・もの語り㉚

2014年10月11日

「能装束から帯づくり、華麗なる野菜栽培士に至るまで・・・」

山口  豊さん【西陣織元】

30選目は、西陣織元、山口さんにお話を伺いました。現在は引退されており、紫野のお宅と園部の畑を行き来する生活を送られています。

お宅に上がらせて頂いた際から驚きました。広い玄関の脇に立派なカボチャが置かれているのです。これが山口さんの畑で作られたお野菜であることは後々知ることになります。

まずは、山口さんの今までのご活躍についてお聞きしました。特に印象的だったのが天然染料を再現されたことです。かつて王朝文化の全盛、天皇・公家の文化として“色”は発達しました。衣冠束帯という公家の装束は色や文様で位を区別していました。山口さんは明度・彩度に拘(こだわ)り草木を使い、天然染料を作り上げられました。これだけでしたら、簡単だと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、驚くべきこととして山口さんは良き色合いを出すために、どの季節のどの時期に植物をとればこういう発色をする、ということをお考えになって色をお創りになったのです。

また山口さんは織元として織りのプロでもあります。その際は染め方を一つ一つ区別し、繊維の特徴もつかみ自ら織られます。ここから山口さんがいかに自然の素材を読む力が優れていらしたか見て取ることが出来ます。赤・黄・青の配分で無限の色を作り出すことが出来るとおっしゃっていました。山口さんは実際に天然植物染料により206種もの色彩を再現されました。

お宅を拝見して窺(うかが)い知ることが出来ますが、あらゆるところに各国の文様のサンプルがあります。その文様は帯づくりにいかされ、アイデアとして参考になされていたようです。伝統に固執せず、幅広い発想を大らかに受容されていることが山口さんの作品の特性であるのかもしれません。

現在は園部の畑で沢山の作物を作っておられます。聞いて驚きましたが、作られているお野菜の数はさることながら、ひとつのお野菜につき3~4種類の品種にまたいで栽培されているようです。食べるものには困らないと笑っておっしゃっていましたが、むしろ食べるものがありすぎて困るのではないかと思ってしまいました。

山口さんは織元としてもご趣味の野菜の栽培に関しても一貫した姿勢をお持ちでいらっしゃるように思われます。「手をかけたらかけただけのものが出来る」、「50年、100年先を見据える」「我田引水では取り残される」「国際感覚を養う」という山口さんのそれぞれのお言葉は、若者へのメッセージとして頂いた『理論と実践の併用』に集約できるでしょう。我々は学問の始まりは理論だと考え、ともすれば理論を修めさえすればその道のプロなのだと考えています。私たちはこの言葉をよく心に留めておくべきでしょう。

能や謡曲は武士の式楽として発達しました。ただの学が優雅さを備えた文化になるまでそうかからず、これらは茶や華といった道になりました。昨今は女性に人気の伝統文化として広く受け入れられています。文化を発生当時のまま完全に継承することは不可能で、変化は避けられません。しかしそれが現在の若年層に受け入れられ新しき日本の文化として成立していくことは好ましいことに思えます。山口さんが今まで携わってこられた能装束・帯づくり、これらもこれからの世代の土台として長く生き続けていくのでしょう。

(執筆者 藤田純佳)

 

☆取材スタッフの感想☆

驚いたのは、御宅の装飾です。興味深く拝見しました。家のあちこちに山口さんのこだわりが感じられ、文様にはあまり廃りがないなあと実感致しました。自分のお気に入りの家具に囲まれ、季節の食材に舌鼓をうつ・・・なんて理想的な生活なのでしょうか。私もその生活に向け日々精進致す所存です!!(藤田)

 

今回伺ったご自宅は西陣から離れていましたが、目の前に畑が広がっていて、西陣とはまた違った雰囲気が漂っていました。

天然染料のお話の中で、濁った色ではないきれいな色、と聞いただけではどのような色かいまひとつ想像できなかったのですが、実際に色の見本を見せて頂いて、色の鮮やかさや上品さを感じられました。

現在でも20種類以上もの作物を育てられていると伺い、大変驚くと同時に、織物だけではなく食への強いこだわりを持っていることが伝わってきました。一人暮らしだとどうしても食生活が偏ってしまうのですが、もう少し健康に気を配った食生活を目指していきたいと思います。(西田)

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