分岐点

北村 成美

更新日:2011年09月18日(日)

北村 成美 なにわのコリオグラファー・しげやん
子供の頃から踊りが大好きで、一日中踊ってばかりの生活が出来たらいいのに、と思ってきた。最近本当にそうなりつつある自分を不思議に思う。私は、ダンサー・振付者として一度死んでるからだ。
 1999年秋、全財産とものすごい気合を入れて自主公演を打ったが、大失敗。莫大な借金を抱え、信頼関係は崩壊し、私の中にある全ての創造的活動は停止した。パチンコ屋でのバイト以外は昼間から酒を飲む日々。みじめだった。自分が踊りをやめることは当然のことだと思っていたし、周りもそう思っていることに抗う気持ちはなかった。ところが、一本だけ舞台が決まっていたのだ。当然断ることにした。自分が踊りをやめることを誠意をもって話そうと思った。しかし、全ての創造的活動が麻痺していたので、その行動が起こせないまま時が過ぎてしまった。仕方がないので、出るしかない。が、踊れないし創れない。そこで、踊り手としての自分の葬式をやることを思いついた。喪服を着て、20分間立ち尽して、死んでしまった自分を晒し者にしようと。で、こんなもんでも一応リハーサルをしとこうと、稽古場に入った。架空の客席に向かって直立不動。しばらくすると飽きてきた。退屈だ。身体がだんだん歪んでくる。ちょっとお尻を振ってみた。ちょっと楽しくなってきた。たくさん振ってみた。「いっそのこと」と、スカートを捲り上げ、お尻をさらけ出してみた。その瞬間、お尻が踊り出した。全身に風が吹き、血が流れた。言葉にならない高揚感と爽快さの中、泣いた。「やっぱり踊りたい!」と。この時、ソロダンサーとしてのデビューを決めた。すでに死んだ気になっていたので、怖いものは全くなかった。

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