分岐点

大屋 さよ

更新日:2011年09月18日(日)

大屋 さよ 役者(執筆当時 劇団八時半)
私が劇団に関わるようになって、かれこれ9年近くが経とうとしています。
そもそもお芝居に興味などなく、劇場に足を運んだことすらなかった私が、どうしてこんなにも長い間劇団を続けているのか、我ながらとても不思議な感じがします。ただ、その理由としてひとつ思い当たるのは,劇団の2回目の公演の日のことです。仕事を休んで公演の準備に向かったあの朝が、私の分岐点のようなものだったのかもしれないと思います。
その日私は、普段なら眠い目をこすりながらいつもの通勤路を歩いている時刻に、TシャツにGパンという、平日のその時間にはありえない格好で職場とは全く別の方向へ向かうということを経験しました。勿論それ以前にも、休暇を取ってどこかに遊びに行くということはありましたが、その日感じたそれは、単に休日に好きなことをしているという開放感だけでなく、ドッグ・イヤーと称される今の流れの中で、劇団でお芝居を続けるという社会的には極めて非生産的な行為を繰り返すことの自由さでした。職場への道を急ぐ人たちを尻目にホールを目指す、「マトモジャナイオトナ」というそれまでの生活の中では考えられなかった有様に、とてつもなくワクワクしてしている自分を見つけてしまったから、元来飽きっぽいはずの私が,こんなにも長い間一つのことに関わってこれたのだと思います。あの日、仕事に向かう人波に逆行する車の中から見たあの空は、実際には今にも雨が降り出しそうなひどい曇天だったのかもしれないのですが、私の記憶の中では間違いなく、真っ青に晴れ上がった朝の空なのです。

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